産業廃棄物をエネルギーとして活用可能か?

廃棄物を原料としてではなく、エネルギーとして再資源化することを「サーマルリサイクル」といいます。ごみ問題はもちろん、エネルギー資源の確保が課題の日本にとって、これは今後とても重要な技術となりえます。では、実際に廃棄物をどのようにエネルギー化しているのでしょうか。基本的に、廃棄物発電ではごみ焼却で生じる熱や蒸気が利用されています。その圧力でタービンを回し、発電を行うわけです。

発電を行っている焼却施設は、現在では各自治体に約300、民間にも数十を数えるほどあります。この数自体は、焼却施設の全体数で見るとわずか2割程度にしかすぎません。しかし、発電施設を備えられる焼却炉は大規模なものにかぎられているため、廃棄物の割合で見るとじつに過半数が発電の燃料とされているのです。

廃棄物発電のなかでも、特に重要な役割を担っているのが産業廃棄物です。産業廃棄物というのは、工場や建設などで発生したごみのことを指します。家庭から出る一般廃棄物とは別の形で回収や処理が行われ、その排出量は年間で4億t近くとされています。一般廃棄物にくらべると、より安定的に燃料を得られるというのが大きなポイントです。

まず、はじめに産業廃棄物発電に注目したのは、パルプや紙製品、あるいは化学製造やセメントをあつかう企業でした。これらの製造には、より多くのエネルギーが消費されるため、自社工場で発電を行う必要性があったのです。燃料には、パルプ黒液や端材、化学反応によって出る廃ガスや有機汚泥などが用いられてきました。最近では、自動車関連の製造業や製鉄業、産業廃棄物処理業などの工場でも、同様に発電が行われています。

2001年には、茨城県の鹿島共同再資源化センターの余剰電力が、電力会社に逆送されることが認められました。これによって、電気代コストを大幅に削減することができるようになりました。一方、原料として多く再資源化されている廃プラスチックも、サーマルリサイクルで活用されています。2003年には、世界で初となる廃プラスチック専焼発電所が苫小牧に造られました。

その発電効率は最大で30%。これは、再生可能エネルギーのなかでも効率が良いといわれる太陽光発電やバイオマス発電も上回る数値です。
およそ2万世帯以上に、安定して電力を供給することができます。また、ボイラ温度をつねに850℃以上にすることで、ダイオキシンなどの有毒成分を排出しない環境への配慮も工夫されています。2007年に稼働がはじまった東京スーパーエコタウンの流動ガス化炉では、廃熱により発電した電力を売電しています。

ほかにも、2005年には宮崎県で鶏糞を燃料とした発電所が設立。海外では、木くずやパーム椰子、コーン、さとうきびなどの廃材やもみ殻などが燃料とされています。一方、古紙や廃プラスチックを固形燃料にしてリサイクルする方法もあります。それが、RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)と呼ばれるもので、これを燃料とした発電施設も作られています。三重ごみ固形燃料発電所では、県内7箇所にあるごみ固形燃料製造施設でRDFを再資源化して利用しています。

RPFによる発電のメリットは、ごみをそのまま焼却するより発電効率が良いことです。その一方で、現在のところその事業は収支不足が続いているのも事実です。今後も、よりいっそうコスト改善などの工夫が必要となってくるでしょう。